本稿は, 1999 年の「東芝問題」の再検討から, インターネットをめぐる紛争に対して法制度などがどのように変化してきたかを検討し, インターネットにおけるコミュニケーションの社会的位置づけについて考察した。まず, 過去10 年間のインターネット利用状況についてまとめ, 技術面・サービス面の向上を背景に, インターネットはいまやわれわれの日常生活に不可欠なコミュニケーション手段となったこと示した。つぎに,「東芝問題」を今日的視点から再解釈し, インターネットが日常化した現在においてインターネット上の個人の表現は実社会の秩序と結びつけられ, その結果, 情報発信者の責任の範囲を明確化する法制度を整備するためにも, インターネットにおけるコミュニケーション行為について社会的共通理解が必要であることを指摘した。そして, ここ10 年でいかにインターネットによる被害が拡大し, どのような法制度がつくられてきたかを確認したうえで, インターネット上の名誉毀損の被害問題に関連した2009 年1月30 日の東京高裁判決をとり上げた。 This paper reviews the 1999 “Toshiba Claimer Case” and examines how judicial rulings have changed regarding lawsuits concerning the Internet. First, we summarize how the Internet has been utilized in the past decade. The summary shows that the Internet has become an indispensable me...